唐破風の構造をさらに深掘りすると、大きく「軒唐破風(のきからはふ)」と「向唐破風(むこうからはふ)」の2種類に分類されます。この2つの違いを理解すると、世界遺産の城郭や社寺建築の観察が格段に面白くなります。
軒唐破風とは、大屋根の軒先の一部をそのまま上にめくり上げるように湾曲させて造られたものです。屋根の水平ラインの途中が波打つように隆起した構造であり、姫路城の大天守や奈良・東大寺大仏殿の正面に見られる巨大な唐破風がこの代表格です。巨大な建物全体に有機的なリズムをもたらし、単調になりがちな大屋根の威容を華やかに引き締める効果を持ちます。
一方の向唐破風は、建物の主屋根から独立して前方に突き出した「向拝(こうはい=参拝者のための庇)」や玄関、門そのものの屋根として作られる構造です。屋根全体の前後が反転曲線を描いており、その頂点たる傑作が日光東照宮の「唐門」です。徳川家康を祀る霊廟の結界として建てられた唐門は、純白の胡粉塗りの向唐破風屋根に数百体にも及ぶ緻密な人物や霊獣の彫刻が埋め込まれており、江戸幕府が誇る絶対的な権威と平和への祈りを象徴する極致といえます。