おびんずる様は「撫で仏(なでぼとけ)」と呼ばれ、患部と同じ箇所を手で擦り、その手で自身の患部に触れることで病気平癒(びょうきへいゆ)や身体の健康回復を祈願します。ただし、単なる接触ではなく、仏教的な礼節を踏まえた正しい作法で行うことが肝要です。
病気平癒を祈る「3ステップ」の基本作法
寺院における撫で仏の参拝手順は、以下の流れが伝統的な基本所作とされています。
ステップ1【合掌と礼拝】:いきなり像に触れるのではなく、まずは尊像の前で居住まいを正し、静かに手を合わせて一礼します。心の中で自身の名前と居住地、そして治癒を願う部位への祈りを唱えます。
ステップ2【患部を慈しみながら撫でる】:自身が不調を感じている箇所(例:頭、肩、腰、膝など)に対応するおびんずる様の身体を、手のひら全体で優しく撫でます。爪を立てたり、強く擦りすぎたりせず、木肌をいたわる心持ちが大切です。
ステップ3【自身の身体へ功徳を移す】:おびんずる様に触れたその手のひらを、直ちに自分自身の患部へ当てます。「おびんずる様の治癒の功徳を自身の体に写し取る」という意識を込めて静かに手を置きます。最後にもう一度合掌し、深く一礼して立ち去ります。
撫でる部位によって異なるご利益の具体例
全身にくまなくご利益が宿るとされていますが、長年にわたる参拝者の願いによって、部位ごとに象徴的な意味合いが定着しています。
・頭部(額・つむじ):頭痛の解消、脳梗塞などの疾患予防、さらには「学業成就」「記憶力向上」「認知機能の維持」を願って撫でられます。
・目・顔面:眼病平癒、視力回復、白内障や緑内障の予防。現代ではスマートフォンやPC作業による深刻な眼精疲労の緩和を願うビジネスパーソンの参拝が目立ちます。
・胸部・腹部:呼吸器疾患の平癒、内臓疾患の治癒、胃腸の調律。胸の苦しみや精神的なストレスを緩和する心理的拠り所としても重宝されています。
・腰・膝・手足:関節痛、神経痛、歩行困難の改善。おびんずる様の膝や足先がとりわけ黒光りしているのは、高齢化社会の中で足腰の平穏を願う参拝者が絶えない証拠です。