1909年(明治42年)に東宮御所として誕生した迎賓館赤坂離宮本館。設計を手掛けた片山東熊が心血を注いだ空間は、ヨーロッパの古典様式に日本の伝統工芸技術が見事に融合した、世界的にも類を見ない美の極致です。一般公開で公開される主要な部屋のなかでも、特に刮目すべき3つの間をご紹介します。
まず、迎賓館のなかで最も格式の高い部屋とされるのが「朝日の間(あさひのま)」です。国賓との首脳会談や謁見の儀が行われるこの大広間は、天井に描かれた「朝日を背にして女神オーロラが4頭立ての白馬の御車を走らせる情景」の巨大絵画が圧倒的な存在感を放ちます。床に敷き詰められた緞通(だんつう)には桜の花が織り込まれ、壁面を飾る京都西陣の金華山織とともに、訪れる者を気品あふれる威厳で包み込みます。2019年に約2年をかけた大規模改修を終え、創建当時の輝きを完全に取り戻しました。
条約の調印式や公式首脳会談の場としてニュース映像でもおなじみなのが「彩鸞の間(さいらんのま)」です。部屋名の由来となったのは、暖炉の両脇や鏡の上部に施された架空の霊鳥「鸞(らん)」の黄金レリーフ。軍服を着た武人や兜、鎧のレリーフなど軍事的なモチーフが随所に散りばめられたアンピール様式で統一されており、白と金のシャープで力強いコントラストが空間を引き締めています。
そして、かつて舞踏室として設計された「羽衣の間(はごろものま)」は、優美さと躍動感が共存する特別な空間です。天井には謡曲「羽衣」の世界を描いた大天井画が広がり、壁面には楽器や楽譜のオーナメントが装飾されています。何より圧巻なのは、天井から吊り下げられた国内最大級・約800キログラムの巨大クリスタルシャンデリア3基です。フランス製のクリスタルガラスパーツが数千個組み合わされており、差し込む自然光と電飾が乱反射する光景は言葉を失うほどの美しさを誇ります。
さらに、公式晩餐会が催される「花鳥の間(かちょうのま)」も見逃せません。明治の七宝焼の名匠・濤川惣助(なみかわそうすけ)が手掛けた30枚の「無線七宝花鳥図」は、金属線を使わずに釉薬のグラデーションだけで日本の四季と野鳥を描き切った奇跡の工芸品であり、美術ファンなら息を呑む見応えです。