麻原彰晃の空中浮遊が世に出た記念碑的な媒体が、1985年『月刊ムー』11月号でした。「現代の奇跡」「空中浮揚に成功」といった扇情的な見出しとともに、薄暗い部屋で座禅を組んで浮き上がる麻原の写真が掲載され、当時のオカルトブームに乗って大きな反響を呼びました。
しかし、この運動そのものはオウム真理教のオリジナルですらありません。ヒンドゥー教やヨーガの伝統的な修行法、あるいは超越瞑想(TM瞑想)の指導体系の中に、「ダルマスカンダ(Dharma Skandha)」あるいは「ヨーガの跳躍(ヨギック・フライング)」と呼ばれる身体行法が元々存在していました。
これは、結跏趺坐の状態で呼吸法を整え、骨盤底筋群と下肢の反動を用いて前後にピョンピョンと跳ねる修行法です。本来のインド哲学や伝統ヨーガにおいて、この跳躍は「体内のエネルギー(プラーナ)を高めるための準備段階の身体訓練」に過ぎず、指導者たちも「これは跳躍であって浮遊ではない」と明確に区別していました。
麻原彰晃は、この既存のヨーガ技法を自身の団体「オウム神仙の会(後のオウム真理教)」に取り入れ、「解脱した超能力者だけが重力を遮断して浮揚できる」とすり替えて宣伝したのです。古来の修行法をオカルト的なギミックへと歪曲させた点に、教団の欺瞞の原点がありました。