深川製磁の歩みは、約400年の伝統を誇る有田焼の歴史における一大パラダイムシフトでした。1894年(明治27年)、八代深川栄左衛門の次男である深川忠次が「世界基準の磁器を日本から発信する」という気概を胸に設立。当時、日本国内で主流だった伝統的な絵付けにとどまらず、忠次は自ら欧州へ渡航し、最新の窯業技術とアール・ヌーヴォーの息吹を吸収しました。
その成果が結実したのが、1900年のパリ万国博覧会です。出品作の大花瓶が最高名誉である金牌(メダーユドール)を受賞。欧州の名窯マイセンやセーヴルに比肩する白磁の美しさと独創的な絵付けが、世界的なセンセーションを巻き起こしました。この国際的な技術力と芸術性の確立こそが、1910年(明治43年)に宮内省御用達を拝命する決定打となったのです。
宮内庁の公式食器として選ばれ続ける最大の技術的理由は、独自の「1350度還元焼成」にあります。一般的な磁器よりも高温でじっくり焼き締めることにより、吸水性がほぼゼロで極めて硬質な素地が完成します。公式晩餐会のようなハードな現場でもカトラリー傷がつきにくく、透き通るような純白の肌が料理の色彩を引き立てるという、実用性と審美性の頂点を両立している点が、現在も皇室御用達として重用される確固たる根拠です。