現在、蘭奢待は正倉院の校倉造(あぜくらづくり)の旧宝庫ではなく、昭和期に新設された耐火・空調完備の「西宝庫」に厳重に保管されています。宮内庁正倉院事務所の徹底した温湿度管理のもと、密閉ケースに収められており、研究者であっても直接触れることはおろか、間近で見ることすら極めて困難です。
一般の私たちが目にする唯一のチャンスは、毎年秋に奈良国立博物館で開催される「正倉院展」です。しかし、正倉院に収蔵される約9,000点もの宝物は、原則として一度公開されると向こう10年間は再出陳されないという厳格な保存ルールが存在します。蘭奢待が正倉院展に出陳されたのは、過去を振り返っても1997年(第49回)や2011年(第63回)、そして2019年の東京国立博物館での特別展など、数えるほどしかありません。
実際に展覧会で蘭奢待を目の当たりにした来場者たちの声を取材・検証すると、歴史ファンだけでなく一般参観者にも共通する独特の衝撃があることが分かります。
「想像していたような磨き上げられた工芸品ではなく、ごつごつとした野性味あふれる巨木。信長や義政が切り取った跡がクッキリと窪んでいて、そこに紙の付箋が貼られているのを見た瞬間、教科書の文字が現実の生々しい事件として迫ってきた」(40代歴史愛好家・男性)
「ガラスケース越しなのに、見つめているだけで悠久の香りが漂ってくるような圧倒的な存在感があった。信長はこの前に立って何を考えていたのかと想像すると鳥肌が立った」(30代会社員・女性)
ネット上のSNSやコミュニティ掲示板でも、「次の公開予定はいつなのか」「生きているうちにもう一度肉眼で見たい」という声が常に絶えません。2026年現在、次回の正倉院展での公開予定について宮内庁からの確定発表はまだありませんが、公開周期のサイクルから推測すると、次に出陳される際には展覧会の目玉として列島規模の入場規制や争奪戦が巻き起こることは確実です。