武井咲の経歴を語るうえで避けて通れないのが、全盛期に一部のネットユーザーから浴びせられた「事務所によるゴリ押し」という根強い言説です。2011年から2013年にかけて、彼女は毎クールのように連続ドラマの主演やメインキャストを務め、CMでも毎日のようにテレビ画面に登場しました。この異常とも言える露出頻度が、「実力以上の優遇ではないか」という短絡的な誤解を生む原因となっていました。
だが、当時の現場関係者や制作プロデューサーが明かす実態はまったく異なります。彼女のキャスティングが相次いだ真の理由は、「事務所の力」などではなく、現場における「圧倒的な台本記憶力」「天性の勘の良さ」、そして「何十テイクでも弱音を吐かない驚異のプロ根性」にありました。
当時の密着ドキュメンタリー番組や本人の回顧録において、彼女は「毎日泣く暇もないほど台本に追われていた」「プレッシャーで押し潰されそうになり、逃げ出したい朝もあった」と率直に告白しています。10代の少女が背負うにはあまりにも過酷な重圧を跳ね除け、テレビ朝日の松本清張没後25年企画『黒革の手帖』(2017年)では、歴代最年少の23歳で主人公・原口元子を熱演。視聴者や批評家から「悪女を演じきった圧倒的な風格」「彼女の実力を見誤っていた」と絶賛され、名実ともに看板女優としての実力を証明してみせたのです。