米子の夜、暖簾をくぐると漂ってくるのは、立ち上る出汁の香りと地元客の活気ある語らいです。特に米子駅前を代表する名居酒屋「太平記」の店内では、カウンター越しに大将が鮮やかな手さばきでサバを薄造りに引く姿が目を引きます。SNSや各種レビューサイトに寄せられる口コミ、現地取材で得られた利用者の生の声には共通する驚きが綴られています。
「これまで食べていたサバの概念が完全に崩壊した。青魚特有の臭みどころか、澄み切った上品な脂の甘みしか感じない。サッと出汁にくぐらせた瞬間に身がきゅっと引き締まり、口の中でとろける食感は言葉を失う」(大手IT企業・40代男性出張者)
「地元民ですが、冬になると無性にこの鯖しゃぶが恋しくなります。白ネギを出汁でクタクタになるまで煮て、レアのサバで巻いてポン酢につける。これに鳥取の地酒『千代むすび』や『日置桜』の熱燗を合わせるのが最高の贅沢です」(米子市内在住・50代自営業)
一方で、現場調査で見えてきた「利用者の切実な苦悩」もあります。それは予約難易度の急激な上昇です。地方都市の居酒屋でありながら、グルメ系インフルエンサーの投稿やテレビ番組での露出が重なった影響で、人気店は平日であっても満席が日常化しています。出張が決まった段階、あるいは旅行計画を立てる1ヶ月前の時点で電話を入れなければ、週末のゴールデンタイム(18時〜20時)の席を確保することは困難を極めています。