「ゆでたまご」という名前を耳にして、個人作家をイメージする読者は少なくありません。しかしその正体は、ストーリー・設定・ネームを統括する嶋田隆司氏と、圧倒的な画力とダイナミックな構図を描き出す中井義則氏による、日本漫画界屈指の共同執筆コンビです。
2人の出会いは大阪市立住吉中学校時代に遡ります。漫画を描くことが好きだった2人は意気投合し、初芝高等学校(現・初芝立命館高等学校)へ進学後も合作を継続。1978年、高校3年生の時に投稿した『キン肉マン』が第9回赤塚賞準入選を果たし、翌1979年に『週刊少年ジャンプ』でプロ連載をスタートさせました。当時18歳という若さでの連載開始は、当時の漫画界でも極めて異例の快挙でした。
気になる「ゆでたまご」というペンネームの由来については、デビュー前の高校時代、2人でペンネームのアイデアを出し合っていた最中、嶋田氏が思わず放屁した際、中井氏が「ゆで卵のような匂いがする」と笑い合ったというユーモラスな逸話が公式に語られています。「一度聞いたら絶対に忘れられないインパクトがある」という理由から正式採用され、今日に至るまでその名が世界中のファンに親しまれています。
2人の制作現場における役割分担は、完全なるプロフェッショナルの分業体制です。
- 嶋田隆司(原作担当):プロット作成、キャラクターデザインの原案、セリフ回し、コマ割りの骨格となるネーム制作を担当。読者の感情を揺さぶる熱いセリフと、常識を覆す大胆なストーリー展開を構築します。
- 中井義則(作画担当):嶋田氏のネームを基に、緻密な筋肉描写、超人たちの迫力ある肉弾戦、リング上の立体的なアングルを作画。超人たちの表情や痛みが伝わる肉体美をキャンバスに具現化します。
互いの領域にはあえて過剰に口を挟まず、それぞれの才能を極限まで信じ抜くスタイルこそが、半世紀近くにわたり読者を魅了し続ける原動力となっています。