北島三郎が車椅子を本格的に導入するに至った背景には、相次ぐ大病と不慮のアクシデントがありました。時系列を追うと、その契機は2016年秋の手術に遡ります。
当時、首の痛みと手足のしびれを訴えた北島は、精密検査の結果「頸椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)」および「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」と診断されました。脊髄神経が圧迫されることで歩行障害や手指の麻痺を引き起こす難病であり、神経の圧迫を取り除く顕微鏡下の手術を決断しました。
術後は過酷なリハビリを重ねてステージ復帰を果たしたものの、神経伝達の回復には時間を要し、下半身の踏ん張りが利きにくくなる後遺症が残りました。さらに追い打ちをかけたのが、2019年11月に自宅で起きた転倒事故です。
自宅療養中に足元を滑らせ、両足の指を骨折する重傷を負いました。高齢期における骨折は筋肉の急速な衰えを招く最大のリスク要因です。主治医や周囲のスタッフは再転倒による致命的な怪我を防ぐため、「移動時の完全な車椅子活用」を選択しました。これが、世間一般に車椅子姿が定着した決定的な理由です。