金曜ロードショーの歴史において、ファンの熱意がテレビ局の編成を直接動かした象徴的な出来事が「劇場版名探偵コナン リクエスト投票」企画です。歴代作品の中から視聴者の純粋な投票によって放送作を決めるこの試みで、圧倒的な支持を集めて頂点に君臨したのが、2002年公開の第6作『名探偵コナン ベイカー街(ストリート)の亡霊』でした。
本作は、著名な劇作家・野沢尚氏が脚本を手掛けた異色作です。19世紀末のロンドンを模した仮想現実ゲーム「コクーン」に閉じ込められた子供たちが、日本の世襲社会や拝金主義を乗り越え、命を懸けてジャック・ザ・リッパーを追い詰めるプロットは、公開から20年以上が経過した現在でも色褪せることがありません。
当時、この作品が地上波で長年再放送されにくかった背景には、原作者サイド、脚本家遺族、制作会社の権利関係の調整に加え、初期のセル画からデジタル移行期におけるマスター映像の解像度問題など、複数のデリケートな障壁が存在していたと囁かれていました。それだけに、デジタルリマスター版として金曜ロードショーの舞台に堂々蘇った夜は、オールドファンからZ世代の新規層までが「神回」と絶賛し、Xのトレンドランキングを独占。視聴者の純粋な声が名作の価値を掘り起こし、地上波の公共空間に再提示した奇跡的な事例として語り継がれています。