法律実務において両罰規定をわかりやすく捉えるには、「誰が犯罪を実行し、誰がその利益を得ていたのか」という構造に着目する必要があります。刑法の基本原則では、犯罪を行った本人を罰する「個人責任の原則」が敷かれています。しかし、企業活動における不正は、個人の私利私欲だけでなく、会社の売上拡大やコスト削減といった業務上の要請を背景に行われるケースがほとんどです。
そこで多くの特別刑法や行政刑法では、業務主体処罰と行為者処罰を法的に連動させる仕組みを取り入れています。違反行為を直接実行した従業員(行為者)を処罰するのと同時に、その者を雇用して事業活動を行い、利益を享受している法人(業務主体)に対しても刑事罰を科す規定、これが両罰規定です。
ここで重要なのは、両罰規定による法人処罰が成立する際、法人は「従業員の身代わり」として罰せられるのではないという点です。判例法理において法人は、「違反行為を防止するための選任・監督責任を怠った」という法人自身の過失(監督義務違反)を根拠に処罰されます。つまり、社員の不正はそのまま「会社の管理体制の欠陥」とみなされるのです。