激痛に襲われた際、多くの人が最初に手を伸ばすのがロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン)に代表されるNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)です。しかし、これがロキソニンが効かない理由の核心でもあります。痛みには大きく分けて、組織のケガや炎症から生じる「侵害受容性疼痛」と、神経そのものが圧迫・損傷・変性して生じる「神経障害性疼痛」の2種類が存在します。
ロキソニンは、炎症を引き起こす生体内物質「プロスタグランジン」を産生する酵素(シクロオキシゲナーゼ:COX)を阻害することで鎮痛効果を発揮します。足首を捻挫した、親知らずを抜いた、喉が腫れて痛むといった場面では劇的な効果を示します。一方で、坐骨神経痛、肋間神経痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛などの神経障害性疼痛は、プロスタグランジンによる炎症が主因ではありません。損傷した神経終末から電位依存性カルシウムチャネルを介して、神経伝達物質(グルタミン酸やサブスタンスPなど)が過剰に放出され、脊髄から脳へ「偽の痛みの電気シグナル」が暴走して伝わり続けている状態です。
火災に例えるなら、侵害受容性疼痛は「実際に木材が燃えている火事」であり、消火器(ロキソニン)で消火できます。対して神経痛は「火災報知器の配線がショートして警報ベルが鳴り響いている」状態です。火が出ていない場所へいくら消火剤を撒いても警報は止まりません。臨床現場の整形外科医やペインクリニック医の証言でも、「市販の痛み止めを規定量以上飲んでも1ミリも痛みが引かず、胃壁を荒らして受診する患者が極めて多い」と警鐘が鳴らされています。配線のショートを修復するか、鳴り止まない電気信号そのものをブロックする専用の薬剤でなければ、神経痛の苦痛を取り除くことは不可能なのです。