なぜここまで寿司の配送事故が多発するのか。その根底には、外食・飲食サービス産業全体の packaging(包装資材)設計の限界がある。店舗で提供される寿司は、職人が美しい立体感をもって盛り付けることを想定しており、デリバリー時の過酷な振動や前後左右へのG(重力加速度)を考慮して作られているわけではない。
一部の大型チェーン店では、容器底部に滑り止めシートを敷いたり、仕切り入りの専用トレーを採用したりする動きが出ている。しかし、個人経営の寿司店をはじめとする多くの店舗では、依然として軽量な汎用プラスチック容器が使われているのが実情だ。
保冷剤の重みやガリの配置ひとつで重心が偏り、走行中の微細な振動で一貫が滑り出すと、ドミノ倒しのように全体のバランスが瓦解する。職人が握る極上のネタであればあるほど、ラストワンマイルの物理的衝撃に耐えきれないという課題が浮き彫りになっている。