この感染症の主な原因となるのは、A群溶血性レンサ球菌である。本来は日常的に見られる細菌であり、子供の咽頭炎(いわゆる溶連菌性のどの炎症)などを引き起こすことが一般的だ。だが、何らかの理由で血流や深部組織に侵入した瞬間、その様相は一変する。
体内で増殖した細菌が強力な外毒素を放出すると、周囲の組織が急激に破壊されていく。特に皮膚の深部にある筋膜に沿って炎症が爆発的に広がり、皮下組織が壊死していく壊死性筋膜炎を発症。患部は紫黒色に変色して水疱が形成され、まるで肉が内側から溶けていくかのような病変を見せる。この劇的な組織破壊こそが「人食いバクテリア」と呼ばれる所以だ。病変の拡大速度は1時間に数センチメートル単位に達することもあり、執刀医による緊急の手術・デブリードマン(壊死組織の切除)が追いつかないことすらある。