「水煮缶は便利だが、独特の生臭さがどうしても苦手」という声は少なくありません。この臭みの正体は、魚の体内に含まれるトリメチルアミンオキシドが酵素や熱によって還元・酸化されて発生する「トリメチルアミン」という揮発性アルカリ物質です。適切なサバ缶水煮の臭み消し調理法を導入すれば、臭気成分を化学的に分解・揮発させ、専門料理店のような洗練された味わいに昇華させることが可能です。
最も基本的かつ強力な手法が、「酒による共沸(きょうふつ)現象」の利用です。加熱調理の最初期段階で清酒または白ワインを回し入れ、強めの火でアルコール分をしっかりと沸騰させます。アルコール分子が気化する際、周囲のトリメチルアミン分子を抱き込んで空気中へ運び去るため、魚特有の青臭さが一気に霧散します。
次に有効なのが、「酸性物質による中和反応」です。アルカリ性であるトリメチルアミンは、酸と結合すると不揮発性の塩(えん)に変化し、鼻腔に届く臭気を出さなくなります。トマト缶、レモン果汁、米酢、梅干しなどを煮込みや和え物に少量加えるだけで、臭みが劇的に抑えられます。
さらに、プロの料理人が現場で多用するのが「加熱によるメイラード反応」です。煮汁を投入する前に、少量のオリーブオイルやごま油を敷いたフライパンでサバの身の表面を軽く焼き付けます。表面のアミノ酸と糖が反応して香ばしい芳香化合物が生成され、魚臭さを覆い隠す強力なマスキング効果が得られます。