世間を騒然とさせた大麻グミの内部から検出された主たる物質は、大麻草に含まれる天然の有害成分ではなく、化学的に構造を改変して作られた合成カンナビノイドでした。特に大規模な健康被害を引き起こした製品からは、HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)と呼ばれる化合物が集中的に検出されています。
本来、大麻取締法で厳しく禁止されてきたのは、大麻草の葉や花穂に多く含まれる「THC(テトラヒドロカンナビノール)」という向精神作用物質です。THCは脳内のカンナビノイド受容体(CB1受容体)に直接結合し、陶酔感や知覚変容、幻覚をもたらします。製造業者らはこの規制を回避する目的で、THCの分子構造をわずかに改変したHHCHなどの新規化合物を人工的に合成し、グミなどの食品形態に加工して「合法」と謳い流通させていました。
国立医薬品食品衛生研究所などの分析によると、これらの合成カンナビノイドは天然のTHCよりもCB1受容体への結合親和性が異常に高く設計されているケースが少なくありません。その結果、極めて微量であっても生体へ及ぼす影響が予測不能となり、強烈な急性中毒症状を引き起こす主因となりました。