昨今のSNSでは「物欲を手放した身軽な暮らし」「持たない暮らしこそ至高」という言説が溢れており、物欲がない自分を「精神的に成熟したミニマリスト」として肯定しようとする風潮が強く存在します。
しかし、ここには重大な落とし穴が潜んでいます。本物のミニマリズムとは、自らの強烈な価値観に基づいて「選び抜いた結果の削減」であり、欲望の棚卸しを主体的に行った状態を指します。一方、疲労や抑圧から生じる物欲の喪失は、単なる感受性の衰退・情動の鈍麻に過ぎません。
「何も欲しくない自分は悟りを開いたのだ」と錯覚して放置すると、やがて趣味への興味、キャリアへの向上心、人間関係の構築に対するモチベーションまでもが連鎖的に失われていく危険性があります。「モノを選び取る気力すら湧かない衰弱」と「心から現状に満足している充足」を混同してはなりません。