口に含んだ瞬間に広がる、甘み、土の香り、そして心地よい弾力。既製品のトウモロコシ粉(マサ・アリナ)では決して生み出せないこの圧倒的な風味の源泉泉こそが、古代メソアメリカより受け継がれてきた伝統技法「ニシュタマリゼーション」だ。
乾燥した在来種トウモロコシを石灰水などのアルカリ性溶液でじっくり煮込み、一晩浸漬させる。この工程によって硬い果皮が柔らかくなり、結合していたナイアシンが遊離して栄養価が跳ね上がる。店内で毎朝行われるのは、専用の火山岩石臼(モリーノ)で青トウモロコシを挽き、加水しながら絶妙な水分量でマサへと仕立てる極めて緻密な手作業だ。
焼きたてのトルティーヤがふっくらと膨らむ数秒間、立ち上る湯気そのものが至高のアペタイザーとなる。穀物が持つ生命力を限界まで引き出した一枚には、何気ない日常食を超越した神秘が宿っている。