1989年1月、昭和という長大な時代が終焉を告げる直前のわずか7日間。その空白のような一瞬に起きた「翔子ちゃん誘拐殺人事件」は、警察にとって最大の失態となった。身代金2000万円を奪われ、幼い命を救えなかった痛恨の記憶。捜査陣は総力を挙げたものの、犯人の手がかりは完全に途絶え、事件は未解決のまま時効へのカウントダウンを刻み始めた。
この事件が「ロクヨン」と呼ばれるのは、元号の短さゆえの皮肉だ。昭和64年に起きた事件であるにもかかわらず、直後に改元されたことで捜査員たちの記憶と組織の記録だけに取り残されていく。元刑事で現在は警務部広報官を務める三上義信は、警察庁長官の視察を機に、再びこの忌まわしい過去の泥沼へと引きずり込まれていく。