冷酷無比な経営者である湯婆婆が唯一、無条件の愛情を注ぐ相手が坊だ。金強欲な彼女が金塊や契約書すら忘れて取り乱すのは、坊の姿が見当たらない時だけである。この過剰な執着は、毒親的側面を持ちつつも、人間的な弱さと切実な母性を浮き彫りにする。
物語の終盤、旅から戻った坊は自らの足で立ち上がり、湯婆婆に向かって「千を泣かしたらばあば嫌いになっちゃうぞ」と言い放つ。支配される存在から、一人の対等な個として母親に対峙した瞬間だ。湯婆婆の溺愛を乗り越え、自分の意志を示した坊の言葉は、二人の関係性が新たな段階へ移ったことを物語っている。