長く短い祭コード進行を徹底解剖!浮雲の神カッティングと伴奏の極意

長く短い祭コード進行を徹底解剖!浮雲の神カッティングと伴奏の極意

長く短い祭コード進行を徹底解剖!浮雲の神カッティングと伴奏の極意の全貌を丁寧に掘り下げてご紹介します。

椎名林檎が構築する楽曲の真骨頂は、キャッチーなメロディの背後に仕掛けられた高度な和声理論にあります。椎名林檎のコード進行の特徴と理論を紐解くと、クラシックの機能和声、ジャズの代理コード、さらには歌謡曲の哀愁を帯びた旋律がミリ単位で計算され尽くしている事実が浮かび上がります。

本作の基本キーはEm(ホ短調)を主軸としながら、平行調であるGメジャーの響きを巧みに行き来します。とりわけ楽曲全体を支配しているのが、単純なマイナーペンタトニックでは説明がつかない「Emドリアン・モード」の色彩です。Aメロでは、トニックであるEm7に対してサブドミナントとしてメジャーコード感を持つA7(またはA9)を衝突させ、ブラジリアン・フュージョンのような浮遊感を生み出しています。

さらにBメロからサビへ向かうブリッジ部では、ジャズの王道である「F#m7(♭5) → B7(♭9) → Em7」というマイナー・ツー・ファイブ・ワンが炸裂します。ここでB7にオルタードテンション(♭9thや♯9th)が意図的に付加されることで、哀愁と焦燥感が一気に極限へと達します。当時の制作秘話を振り返る音楽ディレクターの証言によると、「林檎氏のデモテープ段階から、トップノートの動きとベースラインの対位法的な美しさは完成されていた」といい、単なるダンスビートの枠組みを超えた芸術的な和声設計がなされていることがわかります。

中川 明日香
著者

中川 明日香

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。