この言葉が広く認知されるに至った最大の原動力は、日本の政治・行政の場にある。かつて岸田文雄前首相が首相官邸での記者会見や国会答弁において、重要政策の審議方針を述べる際に「前広に検討を進めてまいりたい」と繰り返したフレーズは強い印象を残した。
さらに内閣府をはじめとする各省庁の公文書や有識者会議の議事録においても、「関係省庁と前広に協議を行う」といった文言が定型句のように使用されてきた。政策形成の現場では、特定案に固執せず関係各所の意向を汲み取りながら調整を進める姿勢を示す必要があった。そうした行政独特のニュアンスが時事ニュースを通じてお茶の間に浸透し、次第にビジネス社会へと移植されていったのである。