待乳山聖天(本龍院)を訪れて誰もが驚くのが、境内で目にする「大根」の存在感だ。授与所の横には採れたての瑞々しい大根が並び、参拝者はこれを買い求めて本堂へと向かう。この独特な「大根奉納」の習慣には、密教の深い教えが反映されている。
密教において、大根は人間の体内に溜まった毒素や迷い、貪りの心を清める象徴とされる。聖天様が大根を好まれることから、これを捧げることで心身の穢れを祓い、夫婦和合や良縁、商売繁盛などの強力なご利益を授かることができると信じられてきた。境内の石灯籠や線香立て、さらには建造物の装飾に至るまで大根のモチーフが施されている様子は、他の寺院にはない唯一無二の光景だ。