ネットのタイムラインを眺めていると、「腹パン」というフレーズが頻繁に流れてくる。この言葉が持つ意味領域は、思っている以上に広い。
元々は、格闘技や拳闘の世界で使われる腹部への打撃、すなわち「腹パンチ」の略称だ。みぞおちや肝臓(レバー)を狙うボディショットは、一発で相手の呼吸を止め、意識を刈り取る威力を持つ。だが、オンライン上で消費される「腹パン」は、そうした現実の格闘技術とは少しニュアンスが異なる。
サブカルチャーの世界における腹パンは、キャラクターが強烈な打撃を受けて悶絶する「感情の揺らぎ」や「実力差の提示」を意味する演出表現として扱われることが多い。絶大な力を誇る敵が主人公を一蹴するシーン、あるいはギャグ文脈でのやり取り。文脈によって恐怖にも笑いにも転じる振れ幅の広さこそが、この言葉をSNS時代のアテンションエコノミーに適合させた最大の要素だろう。