ネット上の掲示板やSNSでは「アース線を繋がずに10年使っているが無事故」「付けなくても問題なく動く」といった書き込みが散見されます。確かにアース線は電力を供給するための配線ではないため、接続しなくても家電は何事もなく動作します。しかし、この油断が重大な落とし穴を生み出しています。
万が一、家電内部の経年劣化や結露、ホコリの付着によって絶縁破壊(漏電)が発生した際、アース線が繋がっていなければ家電の金属製ボディ全体に高電圧の電気が滞留します。その状態で濡れた手や素足で機器に触れると、人体がアース(電気の逃げ道)の役割を果たしてしまい、数十〜数百ミリアンペアの電流が心臓を貫通します。特に水気の多いキッチンや洗濯場では皮膚の電気抵抗が極端に下がるため、致死的な電撃事故に直結します。
分電盤に備わっている「漏電遮断器(漏電ブレーカー)」の仕組みを正しく理解しておく必要があります。漏電遮断器は回路の行きと帰りの電流差を検知して作動しますが、アース線が接続されていない状態では漏電が起きても電気の逃げ場がないため、遮断器は落ちません。つまり、「人間が触って感電し、人体を通って地面に電気が流れた瞬間」に初めてブレーカーが落ちることになります。これに対し、アース線が正しく施工されていれば、漏電した瞬間にアース線を通って大地へ電流が逃げるため、人が触れる前に即座に漏電遮断器が作動して電気を遮断します。アース線は、人間を身代わり事故から守るための物理的な盾なのです。