「低燃費イコール経済的」という短絡的な方程式には、自動車業界が積極的には語りたがらない重大な死角が存在します。その最たるものが、車両本体価格とハイブリッド用補機類の「将来的なメンテナンスコスト」です。
第一の誤解は、「ハイブリッド車を選べば無条件で元が取れる」という思い込みです。スズキのアルトを例に挙げると、純ガソリン仕様の廉価グレード(約106万円〜)に対し、マイルドハイブリッドを搭載する主力グレード(約120万円〜)は約15万円前後の価格差があります。前述のシミュレーション通り、両者の年間ガソリン代の差は走行1万kmあたりおよそ1万円から1万5千円程度。つまり、車両本体の差額をガソリン代の浮きだけで相殺するには、最短でも10年間、走行距離にして10万km以上を走破しなければ元が取れない計算になります。
第二の盲点は、購入需要が過熱している燃費のいい中古軽自動車に潜むリチウムイオンバッテリーの劣化リスクです。中古車市場で高い人気を誇る先代アルト(HA36S型)やワゴンR(MH55S型)などは、年式が7〜9年落ちを迎え、車両本体が総額50万〜70万円程度で手に入る手頃さから引き合いが絶えません。しかし、マイルドハイブリッド車に搭載されている専用の小型リチウムイオンバッテリーは経年劣化を免れません。中古購入後数年でバッテリー性能が低下した場合、アシスト機能が制限されるだけでなく、万が一バッテリー本体の交換となれば工賃込みで10万円前後の予期せぬ出費を強いられるケースがあります。
中古市場でコストパフォーマンスを極限まで追求するのであれば、複雑な電子制御やバッテリーを一切持たない純ガソリン車の「ダイハツ・ミライース(LA350S型)」や「スズキ・アルト(HA36S純ガソリン仕様)」の低走行車を指名買いする方が、将来の故障リスクと突発的な修理費用を最小限に抑えられるという逆転現象が現場では頻繁に起きています。