「中部地方には何県あるのか」という問いに対し、唯一絶対の正解が一つだけ存在するわけではありません。結論から言えば、学校教育(文部科学省検定教科書)基準では9県、国の開発政策(国土交通省などの中部圏開発整備法)や経済界の基準では10県(または滋賀県を含めた11県)とするのが正確な捉え方です。
文部科学省の学習指導要領に準拠した小・中・高校の教科書では、日本を7地方または8地方に区分する際、中部地方を以下の9県で定義しています。
- 北陸地方:新潟県、富山県、石川県、福井県
- 中央高地(甲信):山梨県、長野県
- 東海地方:岐阜県、静岡県、愛知県
ここで三重県は「近畿地方」に分類されます。小学校のテストや高校入試で「中部地方の県数を答えよ」と出題された場合、模範解答は例外なく「9県」です。この基本ルールを外してしまうと減点対象になるため、学生や受験生はまずこの9県基準を頭に叩き込む必要があります。
一方で、実社会に出ると景色は一変します。1966年に制定された「中部圏開発整備法」第2条において、中部圏は「愛知、静岡、三重、岐阜、滋賀、福井、石川、富山、長野の9県」と定められており、ここでは新潟県と山梨県が外れ、三重県と滋賀県が組み込まれています。さらに、経済産業省の「中部経済産業局」の管轄は愛知・岐阜・三重・静岡(西部)・長野・石川・富山となっており、中央省庁ごとに管轄区域が大きく異なるのが実態です。
一般的にビジネスやニュース報道で「中部10県」と呼ぶ場合、教科書通りの9県に三重県を加えた枠組みを指します。学校教育が「伝統的な自然地理・文化圏」を重視するのに対し、行政や産業界は「産業集積やインフラ網の結びつき」を重視して枠組みを柔軟に再定義している点が、この食い違いを生む根本的な背景です。