ネット掲示板やSNSで定期的に議論される「国内線1時間前到着で問題ない説」。結論から言えば、この言説は極めて限定的な好条件下でのみ成立する綱渡りの理論に過ぎません。空港の現場を取材すると、1時間前に空港の駅やバス停に降り立った乗客が、いかに高い確率でパニックに陥っているかが浮き彫りになります。
そもそも、各社が定める公式ルールを分解してみましょう。現在、ANAやJALをはじめとする国内主要キャリアでは、国内線 保安検査場 締め切り時間は出発時刻の20分前、そして搭乗口への到着は出発時刻の10分前(便によっては15分前)と定められています。「出発1時間前」に空港の旅客ターミナルへ到着した場合、保安検査場の通過締め切りまで残された時間は実質わずか40分間しかありません。
この40分の間に、手荷物カウンターでの荷物預け、混雑したフロアの移動、そして保安検査場の待機列をすべてクリアしなければなりません。羽田空港第1・第2ターミナルや伊丹空港、新千歳空港、福岡空港といった拠点空港では、駅の改札から出発ロビーへ上がるエスカレーターの移動だけで5分以上を要します。さらに、少しでも手荷物検査で引っかかったり、修学旅行生や訪日観光客の団体と列が重なったりすれば、40分など一瞬で蒸発してしまいます。「1時間前で十分」と豪語する人々の大半は、機内持ち込み手荷物1個だけで移動し、スマートフォンで改札を通過できる手慣れたビジネス客の成功体験に過ぎない点に注意が必要です。