日本のディナーシーンで最も混乱を招きやすいのが、「イギリス式(英国式)」と「フランス式(大陸式)」の作法の違いです。どちらか一方が間違いというわけではなく、双方が発展してきた宮廷文化や食事観の違いに由来しています。
かつての英国上流階級では、「カトラリーの尖った先(刃や爪)を口に向けること」や「食べ物をスプーンのようにすくい上げる行為」を粗野と見なす厳格な美意識が存在しました。そのため、フォークの背に料理を押し乗せて口へ運ぶスタイルが定着した歴史があります。一方で、フランス料理はソースの豊かな風味を余すところなく味わうことを最優先とするため、フォークの腹(くぼみ側)を上にしてソースや付け合わせをすくう所作が自然と好まれるようになりました。
このように、フランス式イギリス式違いを構造として理解しておくと、会席で同席者がどちらのスタイルをとっていても慌てる必要がなくなります。現代の高級グランメゾンやホテルディナーにおいては、料理のソースをパンやフォークの腹で美しく味わうフランス式の合理性が広く支持されています。