監督を務める是枝裕和は、カンヌ国際映画祭をはじめ世界中の映画ファンを魅了し続けてきた人物だ。その彼が本作で真っ向から挑むのが、重厚な歴史サスペンスの世界である。静謐なカット割りの中に人間の業と欲望を炙り出す手腕は、今作でも遺憾なく発揮されている。
その主役に抜擢されたのが、名実ともに日本最高峰の俳優、役所広司だ。極限状態に追い込まれた男の狂気と哀愁を、圧倒的なリアリティで体現してみせる。二人が現場で火花を散らす緊張感は圧巻の一言。カメラが回っていない時間すら異様な張り詰め方が漂っており、作品に対する妥協なき執念が現場を支配している。