大手ネット掲示板やSNS、知恵袋などの投稿を分析すると、浴衣の前合わせに関するトラブルは毎年のように話題にのぼります。特に多いのが、街頭で見知らぬ通行人から着付けの間違いを強烈に指摘される「浴衣警察(ゆかたけいさつ)」との遭遇劇です。
一般社団法人や着付け関連団体のヒアリング調査によると、夏祭り参加者のうち約12%が何らかの形で襟の合わせ方を誤って着用した経験があると回答しています。ネット上では「高校生の頃、友達と張り切って浴衣を着て祭りに行ったら、すれ違いざまの年配女性から『あなたそれ、死人に着せる着方だよ!恥ずかしい!』と大声で怒鳴られて泣きそうになった」「彼氏に一生懸命着付けてあげたのに、後からメンズも左が上だと知って絶望した」といった痛烈な体験談が散見されます。
着物の柄行(デザイン)にも落とし穴があります。現代の浴衣は、正しく着たときに胸元や上前(左身頃)の最も目立つ位置に美しい花柄やメインの文様が出るように設計されています。もし間違えて左前に着てしまうと、柄が不自然に途切れたり、本来隠れるべき無地に近い部分が表に出てしまい、全体のバランスが明らかに崩れてしまいます。周囲に指摘されなくても「なんとなく違和感がある」と気付かれてしまうのは、この和裁の構造設計によるものです。