日本において「ピース オブ ケイク」という言葉が広く認知される大きな契機となったのが、人気漫画家・ジョージ朝倉氏による傑作コミック『ピース オブ ケイク』、および2015年に公開された実写映画版(監督:田口トモロヲ、主演:多部未華子・綾野剛)です。
本作の主人公・梅宮志乃は、流されるままに付き合っては別れを繰り返す、いわゆる「恋愛依存体質」の20代女性。バイト先の店長・菅原京志郎に本気で恋をしたことで、初めて自分自身の弱さやエゴ、不器用さと向き合っていく姿が赤裸々に描かれます。
ここでタイトルとして掲げられた「ピース オブ ケイク」には、極めて痛烈で巧みなダブルミーニングが込められています。
ひとつは、「簡単に恋に落ち、簡単に身体を許してしまうこと=安易で楽な選択(a piece of cake)」。そしてもうひとつは、ケーキを簡単に食べるように始まったはずの恋愛が、いざ本気になると決して一筋縄ではいかないという「皮肉とままならなさ」です。容易なはずの人間関係がどれほど複雑で傷つきやすいものか、という作品の根底にあるリアルな感情が、この英語スラングを通じて見事に表現されています。