スマートフォンを叩けば、数多の刺激的なサウンドが瞬時に手に入る現代。しかし、SNSで今最も使われている音源の一つが、40年以上前に録音されたアコースティックナンバーだという事実は実に興味深い。Z世代の若者たちが惹きつけられているのは、作り込まれた電子音にはない「人間の指が放つ生の揺らぎ」と「言葉の重み」だ。
「TikTokで偶然耳にして、胸が締め付けられるような感覚になった」。都内の大学に通う20代女性は語る。タイパ(タイムパフォーマンス)が叫ばれる令和の音楽シーンにおいて、行間を聴かせるような余白の美学が、かえって過剰な情報に疲れた若者たちの心に深く刺さっている。