『離したくはない』の普遍的な価値は、ジャンルや世代を超えた実力派アーティストたちによるカバーの歴史にも証明されています。
EXILE TAKAHIROがソロプロジェクトで敬意を込めて歌い上げたバージョンや、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔がバラエティや音楽特番でリスペクトを捧げたパフォーマンス、さらにはCHEMISTRYの堂珍嘉邦によるソウルフルなアプローチなど、時代を代表するボーカリストたちがこの曲を歌い継いできました。女性シンガーによるアコースティックカバーも多数存在し、男性目線の詞でありながら、女性側からの「言われてみたい究極の告白」としても愛されています。
そして何より、この曲を語る上で欠かせないのが、ボーカル森友嵐士が歩んだ壮絶な軌跡です。1990年代半ば、人気絶頂の中で突然の声帯の異変。診断名は「心因性発声障害」でした。歌おうとしても声が出ないという過酷な運命により、T-BOLANは1999年に解散を余儀なくされます。
しかし、森友は決して歌うことを諦めませんでした。約15年に及ぶ沈黙と孤独なリハビリの末、奇跡的に歌声を取り戻し、2012年にT-BOLANを再結成。2020年代を超えて2026年の現在に至るまで、精力的な全国ツアーやアコースティックライブを展開し、円熟味を増したハスキーボイスで『離したくはない』を歌い続けています。「声を取り戻した森友嵐士が今歌うからこそ、あの歌詞の重みが何倍にも伝わってくる」というファンの声は、公式ライブ会場でも絶え間なく響いています。