富本銭が生み出された飛鳥池遺跡は、まさに飛鳥時代の技術集積地であった。発掘調査では、青銅を溶かす炉跡や送風管の破片、金や銀を加工した痕跡までもが同一の区画から発見されている。単なる鋳造所ではなく、国家直轄の総合金属加工プラントが存在していたのだ。
ここでは高度な金属調合技術と厳重な品質管理が行われていた。銅とアンチモンの絶妙な配合比率は、銭貨の耐久性と美観を高めるための試行錯誤の賜物である。職人たちの息遣いすら聞こえてきそうな工房跡は、国家主導によるものづくりの原点であり、飛鳥文化の技術水準の高さを物語る動かぬ証拠となっている。