最終話を語る上で絶対に外せないのが、車椅子生活を送っていたクララ・ゼーゼマンが自らの足で歩行を果たす一連のドラマである。巷では「奇跡の瞬間」として一括りに語られがちだが、監督を務めた高畑勲と、場面設定・画面構成を担当した宮崎駿のコンビが仕掛けた演出は、単なる神秘主義や安易な奇跡劇とは一線を画していた。
クララが立ったのは、最終話の直前のエピソードから入念に積み重ねられたリハビリテーションの結実だ。アルプスの厳しい自然環境、クララ自身の激しい葛藤、そしてハイジたちの必死の励まし。宮崎駿による徹底したレイアウト作業は、クララが大地を踏みしめる足元の一筋の筋肉の動きや、体重移動のリアリティを画面上に完璧に構築した。高畑勲はそこに、登場人物たちの沈黙と呼吸の合間を巧みに差し込むことで、人間が自立する瞬間の崇高さを描き出したのだ。