放送当時、日本中の女性たちを虜にし、ファッション業界に莫大な経済効果をもたらしたのが神野桜子のワードローブです。この時、主演を務めた松嶋菜々子の当時の年齢は27歳。劇中で桜子自身が放った「女が最高値で売れるのは27歳」という挑発的な台詞と完全にシンクロする年齢であり、女優としての美貌と成熟が最高の形でスパークした瞬間でした。
数ある神野桜子衣装ブランドの中でも、作品の象徴として語り継がれているのが、第一話の合コン登場シーンや第十話の運命的な場面で着用されたサルヴァトーレ・フェラガモのオレンジ色コートです。鮮烈な発色と気品に満ちたシルエットは、暗い冬の街並みの中で圧倒的なヒロインオーラを放ち、当時のフェラガモ直営店に問い合わせが殺到する社会現象を巻き起こしました。
さらに劇中では、以下のような名だたるトップメゾンが惜しみなく投入されていました。
- シャネル(CHANEL):勝負合コンや機内乗務時に身に纏うクラシカルなツイードスーツやバッグ
- フェンディ(FENDI)&セリーヌ(CELINE):知的なCAとしての品格を支える上質なアウターやレザーグッズ
- ヴァン クリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels):桜子の華奢な首元や耳元を彩るハイジュエリー
しかし、桜子のファッション描写が傑出していたのは、単なるブランド賛美にとどまらなかった点にあります。給料のすべてを高級メゾンにつぎ込み、外では完璧な令嬢を演じながら、帰宅すれば風呂なし・築数十年の四畳半アパートでカップラーメンを啜る――。この凄まじい落差と偏執的なまでの美意識は、彼女が幼少期に味わった極度の貧困への恐怖と復讐心から生まれた「鎧」でした。ハイブランドの衣装は、彼女が過酷な現実社会を生き抜くための戦闘服だったのです。