「モモ」という名付けの背景を掘り下げると、単なる外見的な連想にとどまらない、重層的な文化的背景と願いが存在していることが分かります。主な由来は以下の3点に大別されます。
第1に、古代東洋における吉祥・魔除けの象徴です。日本最古の歴史書『古事記』において、黄泉の国から逃げ帰る伊邪那岐命(イザナギノミコト)を救ったのは桃の実でした。その功績から桃は「意富加牟豆美命(オオカムヅミノミコト)」という神名を授けられています。また中国の道教説話でも、西王母の桃園に実る仙桃は「不老長寿」をもたらす霊薬とされてきました。「病気や事故に遭わず、健やかに長生きしてほしい」という飼い主の切実な祈りが、モモという二文字に託されているのです。
第2に、春の訪れと生命力を告げる和の情景です。桃の節句(ひな祭り)に象徴されるように、モモは春の訪れと女性的な健やかさを祝う花です。春生まれの子犬や、保護犬を迎えた際に「これからの犬生が春のように温かく花開くように」と願って名付ける家庭が少なくありません。
第3に、ミヒャエル・エンデの世界的名作『モモ』に由来するケースです。時間どろぼうから人々を取り戻す少女モモの姿を描いたこの物語は、多くの読書家に感銘を与えてきました。多忙を極める現代の都市生活において、「愛犬とともに過ごすかけがえのない豊かな時間を取り戻したい」「この子が自分の時間にゆとりをもたらしてくれますように」という現代的な願いを込めて名付ける知識層も一定数存在します。