インターネット上の解剖学まとめサイトや個人の学習ブログには、時に致命的な誤解を招く記述が散見されます。国試直前の受験生が陥りがちな2大トラップを是正しておきます。
誤解①:「内側腋窩隙にも神経が通っている」という思い込み
「外側が腋窩神経なら、内側にも肩甲上神経あたりが通っているはずだ」と無意識に類推してしまうミスです。断言しますが、内側腋窩隙を通過する主要な神経幹は存在しません。通過するのは「肩甲回旋動脈(および静脈)」のみです。肩甲上神経が通過するのは肩甲切痕(上横肩甲靭帯の下)であり、腋窩隙とは全く異なる経路を辿ります。この「内側=血管のみ」というルールは、国試の正誤判定問題で最も頻出のキラー選択肢です。
誤解②:「上腕三頭筋長頭は筋の前を通るか後ろを通るか」の立体感覚の欠如
平面的に描かれたイラストだけを見ていると、長頭の前後関係を見落とします。実際には、上腕三頭筋長頭は「大円筋の後ろ(背側)」を通り、「小円筋の前(腹側)」を抜けて関節下結節へと向かいます。この立体的な交差構造があるからこそ、肩関節を動かした際に間隙の形状がダイナミックに変化し、絞扼の誘因となるのです。