アニメ『タッチ』の主題歌を語る上で決して外せないのが、伝説の初代OP曲「タッチ」の制作背景に隠されたドラマだ。
実は、歌い手である岩崎良美にこのオファーが舞い込んだ際、彼女自身はアイドル歌手としてのキャリアの転換期を迎えていた。ポップス歌手としてのイメージが強かった彼女にとって、アニソンへの挑戦は大きな賭けでもあったという。
作詞を手掛けた康珍化は、あだち充が描く「青春の光と影」「死と再生」というテーマを、「すれ違い」や「吐息」といったセンシティブなワードで見事に言語化した。そして作曲の芹澤廣明が構築したマイナーコードからマイナーへのドラマチックな転調、マイナーからメジャーへ弾けるサビへの展開は、当時のポップス界においても画期的な構造だった。
レコーディング現場では、岩崎良美の透明感溢れる声と切ないボーカルアプローチを引き出すため、細部まで徹底的なこだわりが追求された。「呼吸ひとつ、言葉の切り方ひとつで南ちゃんの切なさを表現してほしい」というディレクションのもと生まれたあの冒頭のブレスとシャウトは、奇跡的なテイクとして今も語り継がれている。