深海や沿岸の暗がりに生息するピンク色の魚の中でも、ひときわ独特な進化を遂げたのが「ピンクハンドフィッシュ」だ。その名の通り、まるで人間の手のような形をした胸鰭(むなびれ)を持ち、海底を「泳ぐ」のではなく「歩く」ように移動する。
タスマニア近海などの限られた海域に生息するこの希少種は、数年間も人前に姿を現さないことから「幻の魚」と称されてきた。エネルギー消費を極限まで抑えるため、素早く泳ぐ能力を捨て、海底をのぞのぞと歩く独特の生態を獲得したと考えられている。一度見たら忘れられないその愛くるしいシルエットは、過酷な自然界を生き抜くための究極の適応形態なのだ。