栃ノ心という力士を語る上で欠かせないのが、規格外の腕相撲と怪力です。少年時代から柔道やサンボで鍛え上げられた肉体は、大相撲界でも群を抜いていました。ベンチプレスで200kg超を軽々と持ち上げ、部屋の力士たちとの腕相撲では誰も歯が立たず、握力は計測器を振り切る100kg超を記録した逸話は相撲ファンの間で伝説化しています。
土俵上でもその怪力は存分に発揮され、150kgを超える巨漢力士のまわしを引き付け、宙に吊り上げて寄り切る「リフトアップ」は栃ノ心の代名詞となりました。相手に十分な体勢を作られても、強引な上手投げや力任せの引き付け一本で逆転する相撲は、見る者を熱狂させました。
大怪我によって関取の座を失い、無給の幕下55枚目まで転落した力士が、腐ることなく泥臭い稽古を耐え抜き、再び幕内最高優勝を果たして大関の地位を掴み取った例は相撲史でも極めて稀です。このドラマチックな経歴こそが、引退後もなお彼が国境を越えて熱烈に支持される最大の理由となっています。