ニキビが鎮静化した後も赤みが引きにくい現象には、明確な病態生理学的プロセスが存在します。ニキビの炎症が毛穴の奥深く、すなわち真皮層まで波及すると、周辺組織は深刻なダメージを負います。皮膚は傷ついた組織を急速に修復しようと、酸素や栄養素を患部へ集中的に送り込むために新しい毛細血管(新生血管)を次々と張り巡らせます。
この修復プロセスにおいて、役目を終えたはずの血管が収縮せずに広がり続けたり、過剰に増殖したまま残存したりする現象が「毛細血管の拡張」です。皮膚の表皮はわずか0.2mm前後の薄さしかないため、真皮層を流れる血液中の赤血球(ヘモグロビン)の赤色が肌表面へと透けて見えてしまいます。これが、肌表面をいくら洗顔・保湿しても赤みが消えない根本的な理由です。
通常、軽微な炎症であれば3か月から半年程度の皮膚の代謝(ターンオーバー)と血管の自然退縮によって赤みは徐々に薄れます。しかし、炎症が重症化して真皮のコラーゲン線維や弾力線維が破壊されてしまった部位では、自然治癒力だけで毛細血管を元通りに収縮させることが難しくなり、1年以上も赤みが固定化してしまうケースが珍しくありません。