後年の岸部シローさんは、朝の情報番組『ルックルックこんにちは』の名司会者として国民的な朝の顔となる一方、事業トラブルや巨額の借金、自己破産、さらには脳梗塞による闘病生活など、まさに波乱万丈という言葉では足りないほどの過酷な人生を歩みました。
2026年8月、71歳でこの世を去った際、孫悟空を演じた盟友・堺正章さんは「沙悟浄、お前も旅立ってしまったのか」と深い哀惜の言葉を寄せました。猪八戒役の西田敏行さん(2026年逝去)や兄の一徳さんをはじめ、多くの関係者が口を揃えて讃えたのは、どんな逆境にあっても失われなかった岸部シローさん特有の「ユーモアと気品」でした。
晩年のドキュメンタリーやインタビューで見せた弱さを隠さない語り口は、かつて砂漠のなかで「オイラはカッパですから」と寂しげに笑っていた沙悟浄の姿と重なり合います。作り物ではない人生の苦みや哀愁を背負っていたからこそ、彼の演じたキャラクターは記号的なお笑いに堕することなく、半世紀を経た2026年現在も人々の魂を揺さぶり続けているのです。