「文系学部廃止騒動」の際、受験生や保護者が最も懸念したのが「文系に進学すると就職で不利になるのではないか」という不安でした。しかし、大手企業の人事責任者や就職支援の現場を取材すると、採用現場の実態は世間のパニックとは全く無縁であったことがわかります。
メガバンクや総合商社、コンサルティングファームの採用担当者への取材では、一貫して「学部名で落とすことはあり得ない」という回答が得られます。むしろ重視されているのは、以下のような実践的能力です。
・文献や資料を正確に読解し、論理的な文章を構成できる力(批判的思考力)
・多様な価値観を持つ人々の利害関係を調整し、合意を形成するコミュニケーション能力
・正解が一つではない複雑な社会課題に対して、適切な「問い」を立てる力
これらのスキルは、まさに文学部での文献講読や、法学部の判例研究、経済学部の市場動態分析を通じて養われる中核能力です。ITスキルやプログラミング能力は入社後のリスキリング研修で半年もあれば実用レベルに引き上げられますが、「他者の心理を汲み取る感受性」や「物事の文脈を深く掘り下げる教養」は、一朝一夕には身につきません。採用現場では、目先のテクニックに偏った人材よりも、根底にある思考の体力を備えた文系出身者が高く評価され続けています。