料理サイトやSNSを中心に「青みが残るトマトを買って室温に放置すれば、追熟して甘くなる」という説が広く流布しています。しかし、農林水産関連の研究機関や植物生理学のデータによれば、この認識には致命的な誤解が含まれています。完熟トマトと追熟の見極めにおける真実を直視しなければなりません。
トマトが樹から切り離された後、室温(約15〜25℃)に置くことで分泌されるエチレンガスによって進行するのは、葉緑素(クロロフィル)の分解とリコピン色素の生成、そしてクエン酸などの有機酸の減少です。要するに「赤く色づき、酸味が抜けてまろやかになる」変化は生じますが、光合成による糖分の供給が途絶えているため、果実内の糖度そのものが上昇することは絶対にありません。酸が抜けることで人間の舌が「甘くなったように錯覚する」だけであり、樹上でギリギリまで光を浴びて完熟した個体の濃厚さには遠く及ばないのです。
したがって、家庭ですぐに極上の味わいを楽しみたいのであれば、最初から「樹上完熟」に近い状態で出荷された玉を射止める必要があります。見極めのポイントはヘタの周辺、いわゆる「肩」と呼ばれる部分です。肩の部分までムラなく濃い赤色に染まり、緑色の筋(ベースグリーン)が完全に消え去っているものは完熟の合図。逆に、数日かけてサラダなどで消費する計画なら、肩の部分にわずかにオレンジ色のグラデーションが残る玉を選び、冷暗所で酸味を適度に落ち着かせてから食べるのが賢明な戦略です。