現在の美しく活気あふれる菓子屋横丁の姿は、決して平坦な道のりの上に成り立っているわけではありません。2015年6月、横丁の一角から出火した火災により、店舗や住宅など数棟が全焼し、死傷者を出すという極めて痛ましい事故が発生しました。長年親しまれてきた歴史的建造物が灰燼に帰し、一時は横丁存続の危機さえ囁かれました。
しかし、悲劇に打ちひしがれる関係者を支えたのは、全国から寄せられた激励の声と、地域が一丸となった強い連帯感でした。商店主や地元住民、専門家、行政が膝を交えて幾度も協議を重ね、策定されたのが「風情の継承と防災性の両立」を掲げた復興まちづくり計画です。単に近代的なビルへ建て替えるのではなく、川越の伝統的な左官技術や木造建築の意匠を忠実に再現しながら、耐火基準をクリアする高度な再建工事が進められました。
数年の歳月をかけて一軒一軒が営業を再開し、見事に再生を果たした菓子屋横丁。街並みの美しさの背景には、先人たちが守り続けてきた伝統の灯を絶やすまいと奔走した人々の不屈のドラマと、深い郷土愛が刻み込まれています。