池井戸潤(いけいど じゅん)は1963年6月16日生まれ、岐阜県加茂郡八百津町出身の小説家です。自然豊かな環境で育った幼少期を経て、慶應義塾大学文学部および法学部を卒業するという極めて知性派の学歴を有しています。
大学卒業後の1988年、都市銀行である三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。バブル経済の絶頂期からその崩壊へと向かう激動の時代に、融資担当や法人営業の最前線に立ちました。当時のインタビューや手記において、池井戸自身は「稟議書の一行、決算書の数字の裏に、どれほど多くの人間の生活やプライドが懸かっているかを骨の髄まで知った」と述懐しています。この現場で目撃した中小企業の苦闘、銀行組織の硬直化したヒエラルキー、そして保身に走るエリートたちの心理描写こそが、後に生み出される傑作群の揺るぎない土台となりました。
1995年に32歳で銀行を退職。以降はビジネス書の執筆や企業コンサルティング、ソフト開発などを手がけながら小説の執筆に没頭します。そして1998年、『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し、華々しい作家デビューを飾りました。銀行内部の不正とミステリを融合させたこのデビュー作は、当時の選考委員からも「金融界の内情を知り尽くした者でなければ書けない傑作」と絶賛され、日本文学界に「経済エンターテインメント」という強固な新ジャンルを打ち立てたのです。