ニュートンが提唱した「7色」の概念は、大英帝国の隆盛とともに近代科学の教科書を通じて世界中へ輸出されました。日本には明治時代、文明開化の教育制度改革に伴って理科教育に導入され、瞬く間に国民的な常識として定着しました。しかし、文化人類学や認知言語学の調査からは、海外と日本での虹の色の見え方の違いが浮き彫りになっています。
言語学者ブレント・バーリンとポール・ケイによる1969年の記念碑的研究『基本の色彩語(Basic Color Terms)』が示したように、人間が認識する色は「その言語にどんな色を表す語彙が存在するか」に強く制約されます。視覚器官としての目の構造は人類共通であっても、脳が情報を切り分けてラベリングするプロセスにおいて、虹の色が国によって違う理由が生まれるのです。
現代の英語圏の教育現場でも、かつて教えられていた「ROYGBIV(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫)」から「Indigo」を除外した6色教育が主流になりつつあります。藍色を青と区別するのは難しく、実態に即していないという批判が教育者から上がったためです。網膜が受ける光の波長は地球上どこでも同一であるにもかかわらず、私たちが何色を見るかは、脳内にある「言葉の引き出し」の数によって決定づけられています。